2014年12月25日木曜日

想い出

想い出がほしい。

君との想い出のために大きな箱を用意した。
小さなものまで詰め込んで
僕はそれを大切にしまっていた。
ときどき引っ張り出しては、少しずつ増えるそれを眺めていた。

そして彼女が去って、僕には箱だけが残った。
箱はたくさんの想い出を抱えきれなくなって
いくつかこぼれ落ちていた。
僕は床に落ちた想い出までも拾い上げて
口いっぱいに詰め込んだ。
それが彼女の一部だと信じて、貪り食べた。

箱の中身を全部平らげ
僕のお腹は何倍にも膨れて上がった。
重力が僕を引きずり込み
僕はそのまま床に倒れこんだ。
大きく膨れたお腹で前すら見えない。
目の前はただの暗闇。

想い出なんていらない。
想い出なんて。

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