2014年12月24日水曜日

追いかけっこ

追いかけっこの誘いに僕は二つ返事で承諾した。
蛙君から誘ってくれるなんて信じられないことだ。
僕はなんだかくらくらしてしまった。
蛙君が虫役になった。僕は蛙君を捕まえなければならない。
合図と同時に蛙君はぴょーんと飛び跳ねた。

僕はどうにかして捕まえようと一生懸命に走った。
だけれども駆けっこの得意な蛙君には僕なんて到底敵わない。
どうしたって蛙君には追いつけない。
そんなことわかっていたのに
断って嫌われることを恐れていたんだ。
だけど僕と蛙君とじゃ違いすぎる。
だってちっとも追いつかないじゃないか。
後姿しかみれないじゃないか。
僕はだんだん自分が惨めになってきて、哀れになってきて、

どうしようもなく涙が溢れてきた。

身体も心も苦しくなって、僕はその場に立ち止まった。
すると蛙君は僕の方へ駆け寄ってきてくれた。


「大丈夫かい? 少し走りすぎてしまったみたいだね」

僕は蛙君に泣いていることを気づかれたくなくて、俯いたまま何も言えなかった。

「ちょっとここいらで休憩しようか。今日は本当に天気がいいなぁ。こんなジメジメした日には大声で歌いたくなってしまうんだよ。少し僕の歌声を聴いていくかい?」

僕は俯いたまま2回うなずいた。
蛙君は僕の横に座り、背筋をピンッと伸ばすといつものように歌い始めた。
静まり返った沼地に蛙君の歌声だけが響いている。
それが僕の心臓の音と共鳴しているようでなんだか心地がよかった。
僕は気が付かれないよう蛙君の横顔をそっと覗き見た。

うん。蛙君はやっぱりかっこいい。
僕は頑張ってよかったなと思った。

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